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「せいちゃん何してるの?」
「わんこのケガを治してあげてるんだ」
「ケガ?」
「うん、ぼくのせいで、ケガしちゃったの」
「せいちゃんが、ケガさせたの?」
「うん。ぼくとさえ関わらなければ、あいつらに石投げられることなんてなかったんだよ」
「また、あいつらなの。わたしに言ってくれれば、すぐこらしめてやったのに」
「…」
「せいちゃん、泣かないで。こんなことは二度と起きないわ。わたしのそばにいればね」
「うん」
「わたしが一生、せいちゃんのそばにいて、せいちゃんを守るから。だからせいちゃんは、安心していて」
「…まりあちゃん、ありがとう。大きくなったらケッコンしようね」
―
マリアはなにか確信したように目覚めた。表情は、決意がみなぎっているように見えた。
「おはようマリアちゃん。いい朝だね」
「すいません、もうペットごっこは終わりにしたいのですが」
「なんだって!許される訳がないだろう!」
しかし男はしばらく考えた後、納得したような表情になった。
「いいだろう。だけど鈴原を殺してからだ」
男はマリアに拳銃を渡した。
「きみが、彼を殺すんだよ」
マリアは手のひらの上の拳銃を呆然と眺めていた。
男はもう一方の拳銃の銃口をマリアの方に向けた。
「きみが鈴原を撃たないんだったら、俺がきみを撃つよ」
「つまりあれですか、どっちにしても私かせいちゃんの、どちらかが死ぬということですか」
マリアはきわめて冷静なしゃべり方だった。
「そういうことになるね」
男も冷静だった。
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