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マリアは自分の背の五センチ以上が髪の膨らみでできていて、その髪のセットには結構な時間をかけた。
服装は奇抜、化粧は普段より増してこい。
十代の女の子にはとても見えなかった。
セイは言った。
「まりあ、キャバにしか見えない」
マリアはそう言われ、ビルの自動ドアにうつった自分の姿を見て言った。
「こういう格好してると、凄く感じる感情があるの。普段からたまに感じているんだけどね、こういう格好すると特に感じるの。気持ち悪いって感じるの。多分、女の子らしいことしてるからかな?女でいることが、気持ち悪いんだきっと。」
「何それ、男になりたいの?」
「そういうわけじゃないんだけど。多分、男になっても同じこと感じる。性があるのが嫌なの。人間でいるのが嫌なんだと思う。何か、性があることが気持ち悪い。人間であることが気持ち悪い。人間でいることにゾッとする。人間ではない生き物になりたいのかと聞かれれば、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。わからない。とにかく私は、人間でいるのが気持ち悪い。きっと、定まってるものが嫌いなんだと思う。こんな小さな耳や目や鼻や皮膚、脳から抜け出して、ちがうもので世界を感じてみたい」
「…はい?…そんなの簡単だよ」
「どうすればいいの、せいちゃん」
「切らしちゃった楽園への切符を手にすればいい」
「切符?」
「うん。楽園への切符はお城の天辺にあるよ」
セイはそう言うと、お城の住所が書かれた紙をマリアに差し出した。
「このゲームは簡単!お城の天辺にある楽園への切符を手にすること。マリアはそのお城のお姫様になりきり、天辺に進まなければいけない。お姫様じゃないとバレた時、ゲームオーバー」
マリアはお城の住所を受け取って言った。
「楽しそうなゲームだね、頑張ってみるよ」
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