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マリアは、まったく傷んでいない、みずみずしい黒いショートカットをしていて、学級委員などをする優等生であった。 マリアが黒板を消していると、セイが教室の外でにっこりと笑ってまりあを手招きしていた。 「せいちゃん、どうしたの」 「まりあ、金かしてくれない?」 セイの視点は、マリアの腹部あたりに向いていて、マリアの目を見てはいなかった。 『せいちゃんの視点が定まらなくなったのは、いつからだっただろうか』 マリアはセイの、荒れた唇に目をやった。 『ちゃんと食べてるのかな、また痩せたみたい、顔は青白いし』 マリアは言った。 「またなの、いくらなの」 「ほんの少しだよ、1万円だよ」 「そんなに?もう貸せないわ」 「お願いだよ」 セイの表情はちっとも変わらず、目線はいまだに下に落ちたままだった。まるで、マリアがセイに金を貸すことは、当然といったような表情である。 しかし案の定、そうなってしまうのである。マリアは口で、いかに嫌かを言ったって、結局はマリアはセイに金を貸すのである。 セイは、そんなには強く頼みこむわけではないのだが、マリアはセイに金を貸す。2人はもうずいぶん前からそのようなやりとりをしていた。 「ありがとう」 セイは、マリアから金を受け取っても、目をあわせなかった。というより、あわせられない、といったかんじで、彼の目線は常に下に向いており、話しかけられても目線は下に向いたままであり、病的ともいっていい程であった。 『せいちゃん、いい加減、どうにかしないとダメだ。せいちゃんが、日に日に衰弱していってるのを、見ていられないよ!わたしが、助けてあげなきゃ』
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