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マリアはすっかり変わり果ててしまったセイを見た。
かつてマリアと一緒だった黒髪は傷み、赤い長髪になり、耳にはたくさんのピアスをしていて、体はほっそりしていた。
マリアとセイは幼馴染みだった。昔はよく2人で遊んでいて、体が弱くていじめられていたセイを、マリアはいつも助けていた。
しかし年を重ねるにつれて、2人のそんな関係は終わりを迎え、今は金の貸し借りをするだけの仲となってしまっていた。
マリアは、セイの後をつける。セイはにっこり笑う。
「どうしたの」
「せいちゃん…このままじゃ…このままじゃ、だめだよ。今の生活を続けてちゃだめだよ」
「どうして」
「せいちゃん、日に日に痩せていってる、せいちゃんの顔色、悪くなってる」
「そう?」
「そうだよ、せいちゃん、辛いんでしょ、わたしは知ってるよ、せいちゃんが、辛いってこと。だってせいちゃんは、全然違う。今つるんでる友達とか、あってないよ。全然、あってないよ、せいちゃんは、無理してるよ」
「そう?」
「そうだよ、もうやめなよ、付き合うの、やめなよ」
「はいはい」
セイはうざそうに去っていく。マリアは後を追い続ける。学校を飛び出す。『せいちゃんのためなら、学校ぐらい、サボれるよ!』
静まり返った住宅街の中の、人も車も一切通らない道路にでる。マリアはセイに見つからないようにこそこそ、尾行し続ける。
「ついてくんな」
セイはそんなマリアに気づいていたらしく、ぼそりとそう言った。マリアはどう答えていいかわからず、何も言えずにいたが、セイが歩き出したために引き続き尾行をした。
セイは、アパートの中に入っていった。
『あれ、アパートに入っちゃった。だけどあれ、せいちゃんの家じゃないよなあ。…なにか、嫌な予感がする。せいちゃんが、危ない目にあってるような!』
マリアはセイの入ったアパートの部屋の前で立ち止まり、深呼吸した。
『なにがあっても、せいちゃんはわたしが助ける!』
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