ある狩人の話

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ある国に一つの村がありました。 その村はたいへん食料に裕福な村でした。 周辺に貧しい村がありましたが食料を分け与えるような事はありませんでした。 なぜこの村が食料に裕福なのかというと畑の多さでした。 村の四分の三の土地は畑に使われていました。 農民達が努力家ばかりということもあって野菜は毎年余るほどできました。 しかし、時々畑が荒らされる日がありました。 どうやら夜遅くに野犬が野菜を盗っているようでした。 荒らされるのは小規模なので農民達はあまり気にしませんでした。 しかし荒らされる畑は日に日に大規模なものになっていきました。村長は狩人を雇う事を決めました。 狩人が村に着くとさっそく村を案内されました。 畑は村人達が住んでいるところから小一時間ほど離れたところにありました。 狩人は畑の大きさに驚きました。 畑の周りには堀が掘られていました。 どうやら野犬対策に掘られたようでしたがあまり効果は無かったようです。 「野犬を撃つときはこの掘りを登ってきたとこを撃ってください。そうすれば死体が堀にたまり肥料になってくれるからです。」 その晩から狩人は野犬を狩り続けました。 畑の中程にある櫓からスナイパーライフルで狙撃しました。 三日ほどすると野犬の動きが変わりました。 野菜ではなく仲間を持って帰ろうとしているようでした。 一週間ほどになると野犬が現れることが無くなりました。 狩人は村からたくさんの野菜や肉を報酬としてもらいました。 彼の村は貧しく痩せこけた子供ばかりでした。 子供の喜ぶ顔が目に浮かびました。 彼は堀がある方向へ歩き始めました。 気が引けましたが仕方ありません。 彼は堀を降りました。 堀にはたくさんの子供の死体がありました。 死体の子供は狩人の村の子供達でした。 死体の中に彼の弟もいました。 狩人は銃口を口に入れ引き金を引きました。 ある村がありました。 その村の野菜は肥料のおかげですくすくと育ちました。 ―――――――おわり
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