王宮の騎士

4/4
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
セニコ王国城下街南にある鍛冶職人の店、エムはそこを訪れていた。 「オヤジ、この剣は直せるか?」 エムは剣を鞘から出して職人に見せた。 「うはぁぁ。こりゃ酷く刃こぼれしてるなぁ…悪い事は言わねぇ、新しく買い換えるんだな」 職人はキッパリそう言った。 「そうか…鍛え直す事も出来ないか?」 エムは縋る様な想いで訊いた。 「うーん。出来ねぇ事はないが買った方が安くつく」 エムはそれを聞いて少し安心して、 「金なら出す、そいつを直してくれ。頼む」 と、深々と頭を下げた。 「…わかった。引き受けよう。騎士さんにそこまで頼まれちゃ、断る理由がねぇ」 職人はエムの目を見て言った。 「はは、ありがとう」 エムは職人へ心からお礼を言った。 「こいつが直るまでこの剣を持っていきな」 「この剣は…」 エムは職人から剣を渡された瞬間何かを感じとった。 「おっ、思った通りあんたなかなかの使い手の様だな。そいつはルーンブレイドと言って魔力が込められている」 職人は腕を組んだ。 「いいのかよ、こんなの借りて」 「いや、あんただからこそ貸したんだ。中途半端な剣は渡せねぇ、と俺のカンが言ってんだ」 職人はエムの剣を見て言った。 「はは、それじゃ宜しく頼むよ」 エムは職人にそう告げて店を出た。 エムは鍛冶屋を出た後、薬屋へ寄り街の外れにある家を訪ねた。 「エレノア、体の方はどうだ?」 エムは訊いた。 「えぇ、今は落ち着いているわ」 エレノアと呼ばれた女性は笑顔で言った。 「そうか、良かった。今は帝国とは膠着状態だが、またいつ戦局が激しくなるか分からない。君は、今の内に疎開した方がいい」 エムはお茶をいれながら言った。 「エム…」 「分かってくれ、君を危険な目に遭わせたくないんだ」 エレノアは何も言わずに頷いた。 「…。明日の朝出発しよう。護衛には俺がつく」 エムはエレノアにカップを渡して言った。 「分かったわ。簡単な荷造りはしておくわ」 「薬はここに置いておく。じゃ、明日」 エムはそう言ってエレノアの家を後にした。 「よう!」 後ろからスカイが声を掛けてきた。 「うわっ、スカイ!」 「ははっ、暇してたからお前を付けてみた」 スカイは笑いながら言った。 「他にすることはないのかよ」 エムはスカイに事情を説明した。 「明日行ってくるのか。早く帰って来いよ」 「分かってるさ」 エムはスカイと一緒に城の方へと歩いて行った。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!