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セニコ王国城下街南にある鍛冶職人の店、エムはそこを訪れていた。
「オヤジ、この剣は直せるか?」
エムは剣を鞘から出して職人に見せた。
「うはぁぁ。こりゃ酷く刃こぼれしてるなぁ…悪い事は言わねぇ、新しく買い換えるんだな」
職人はキッパリそう言った。
「そうか…鍛え直す事も出来ないか?」
エムは縋る様な想いで訊いた。
「うーん。出来ねぇ事はないが買った方が安くつく」
エムはそれを聞いて少し安心して、
「金なら出す、そいつを直してくれ。頼む」
と、深々と頭を下げた。
「…わかった。引き受けよう。騎士さんにそこまで頼まれちゃ、断る理由がねぇ」
職人はエムの目を見て言った。
「はは、ありがとう」
エムは職人へ心からお礼を言った。
「こいつが直るまでこの剣を持っていきな」
「この剣は…」
エムは職人から剣を渡された瞬間何かを感じとった。
「おっ、思った通りあんたなかなかの使い手の様だな。そいつはルーンブレイドと言って魔力が込められている」
職人は腕を組んだ。
「いいのかよ、こんなの借りて」
「いや、あんただからこそ貸したんだ。中途半端な剣は渡せねぇ、と俺のカンが言ってんだ」
職人はエムの剣を見て言った。
「はは、それじゃ宜しく頼むよ」
エムは職人にそう告げて店を出た。
エムは鍛冶屋を出た後、薬屋へ寄り街の外れにある家を訪ねた。
「エレノア、体の方はどうだ?」
エムは訊いた。
「えぇ、今は落ち着いているわ」
エレノアと呼ばれた女性は笑顔で言った。
「そうか、良かった。今は帝国とは膠着状態だが、またいつ戦局が激しくなるか分からない。君は、今の内に疎開した方がいい」
エムはお茶をいれながら言った。
「エム…」
「分かってくれ、君を危険な目に遭わせたくないんだ」
エレノアは何も言わずに頷いた。
「…。明日の朝出発しよう。護衛には俺がつく」
エムはエレノアにカップを渡して言った。
「分かったわ。簡単な荷造りはしておくわ」
「薬はここに置いておく。じゃ、明日」
エムはそう言ってエレノアの家を後にした。
「よう!」
後ろからスカイが声を掛けてきた。
「うわっ、スカイ!」
「ははっ、暇してたからお前を付けてみた」
スカイは笑いながら言った。
「他にすることはないのかよ」
エムはスカイに事情を説明した。
「明日行ってくるのか。早く帰って来いよ」
「分かってるさ」
エムはスカイと一緒に城の方へと歩いて行った。
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