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本当はあげたかった
ユラに似合う薄いピンクの指輪を
「そんなの関係あるかな?」
「あるよ」
周りを見渡すと逃げる場所もないのに逃げ惑う人たち。そんな中、普通に会話する俺とユラが滑稽に思えた。
「もっといろんなトコ行けば良かったね」
ユラがそんな人たちを真っ直ぐ見ながらそう告げる。俺はこくんと頷いた。
付き合って一年たつけれど思えば部活や塾ばかりでデートなんてあまりしていない。ユラともっといれば良かった。
「動物園とか遊園地とか。あ、学校の近くに喫茶店出来てたんだ。あっちにも行きたかった」
「うん」
「あとさ、日曜日に制服デートとかしたかったな。みんなになんで制服なの?って聞かれたら、今日だけ制服がペアルックに見えるからって答えるの」
「うん」
「ペットショップとかも面白いんだよ。かわいい猫がたくさんいて」
「うん」
行きたかった
君と
たくさんの思い出を箱につめてたくさんの気分を味わいたかった。
俺は無意識にユラを抱き締めていた。
そんな俺にユラは小さく笑って俺の肩に額をあてた。その行動も今回初めて。今まで抱き締める事すらためらっていたから。
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