25人が本棚に入れています
本棚に追加
「アーサー、貴方にコレが抜けますか?」
アーサーはその言葉に狼狽えるしかなかった。
敵国の進撃を受け耐える日々の中で父は言った。「この丘に行け」と。行ってみたら、そこには腹部を剣に貫かれている母の姿があった。
衝撃的、鮮烈でいて懐かしい姿が今のアーサーの眼には映っていた。
「母さん……」
「ビックリした? ふふふ」
「父さんが行けって言ったんだ。この丘に」
何か見てはいけないものを見てしまった心境で、ついアーサーは早口になってしまう。息子のそんな心境を悟ったのか、母は優しい表情をその顔に浮かべた。
「そ、そうだ!!」
母の優しさに、アーサーの波だった心も落ち着きを見せる。
「母さん、こんなところで何やってるんだよ!? 半年以上も城から居なくなって……みんなどれだけ心配したと思ってるんだ」
「ごめんね、アーサー。でも、最低でも半年経たないと意味が無かったのよ」
風が、母の長い髪を膨らませる。丘の下に生えた草原が、風見鶏みたくその体を倒して風の方向を教えてくれる。
平和な風景に、不思議なくらい母と剣は馴染んでいた。
「意味?」
「そう。意味。私がここでこの剣と一緒にいる意味よ」
最初のコメントを投稿しよう!