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アーサーの母は、半年前に城から突如消えてしまった。王であるアーサーの父は捜索を命じたが、人里から離れに離れたこの場所まで捜索の手を伸ばそうとはしなかった。いや、させなかったと言ったほうが正しいのか。
何故なら、アーサーにここに行けと言ったのは誰でもない父なのだから。最初から、父はこれから起こる全ての出来事を知っていたのだろう。
「聖なる血を持ってして染められた剣はね、時として聖なる力を宿すの」
風のように飄々と母はそう言った。聖なる血、それが母には流れていたのだ。
「一ヶ月で一匹、二ヶ月で二匹の蛇を宿し、三ヶ月目に聖なる光を宿す。そして更に三ヶ月後、主を癒す光を宿すのよ」
そんな伝承を、母はアーサーを見つめながら言う。幼い時に聞いたことがある伝承。しかし、アーサーはその先を思いだすことは出来ない。あと一歩のところで。
「でも、時としてって……、それって死ぬかもしれなかったんじゃないか!!」
「死ぬ……か。そうなのかもね」
「そうかもね……って」
唖然としてしまうアーサーだったが、母は我が身に突き刺さる剣を慈しみながら撫でる。
「私は死ぬ気でこの子を産む決意をしたのよ。それに、もう私は死ぬのかしらね」
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