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「あ、ヴァイオリン。こんな小さい頃からヴァイオリン弾いてたんだ」
「那衣の叔父さん、無名だけどバイオリニストだったからな」
那須野が指差したのは、那衣の叔父さん。那衣にヴァイオリンを教えた人は、この写真を撮ってすぐに亡くなった。
叔父さんに抱っこされながらヴァイオリンを抱き締める那衣……
“素直で可愛い女の子”は、最愛の人を失った後から転落が激しい。
「……もしかして……だれ? 弟さん? あ、お兄さんだ?」
「那衣だよ」
3冊目は小学校中学年。
この辺りから那衣はヴァイオリンをやめて、男に混ざって遊ぶようになった。長い髪はバッサリ切って、ミキさんのお古ばかり着てた。元々運動神経のイイヤツだけど、ムチャな遊び方をしてケガが絶えず、気に入らないことがあるとすぐに暴力。
「……2人、並んでないね」
「こん時の那衣、今以上に大キライだったし」
集合写真の時だけじゃない。日常生活の中でも、那衣とは距離を取っていた頃。今までの人生の中で最も幻だったような時間。那衣とツーショットの写真が1番少ない時代……
「あ、でも、またヴァイオリン持ってる」
「小3。那衣がバイオリニストっていう明確な夢を見つけたんだ」
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