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日は沈み、空は既に暗くなっている。街灯があるおかげで周りは見えるが人影はいない。
まぁ当たり前だろう。というより、俺は結構遊んでいたんだな。腕時計を見ると時刻は午後六時三十分。
俺の家だと既に夕食の時間だ。今頃律儀に兄の帰りを待っている頃だろう。
その時、ちょうど携帯が鳴り出した。マナーモードは解除してあるから音が俺を中心に周りに響く。
案の定発信場所は俺の家。おそらく伊咲がかけているだろう、もしかしたら以心伝心くらい俺と伊咲なら可能じゃないのか?
妹に対してこんな事を考えている俺……うん、かなりマズイ。とにかく電話に出るか。
通話ボタンを押し、耳に近づけるとテレビの音が俺の携帯を通して聞こえてくる。
『もしもし、お兄さま……まだ帰ってこないの?』
「ああ、今帰っているからちょっと待ってて―――」
伊咲の泣き顔が頭に浮かんできた頃、俺の後ろから気配を感じた。
どうせ誰かが散歩か何かしているだろう、……どんなにそれが良かったか事か。
俺はこの時早く帰れば良かったと切実に思う。
「貴方が楼滝陽介ですか?」
……危険、再来…。
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