悲劇ヒーローでも喜劇

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近くにきてわかった事はここが他の追随をゆるさないくらい夜店のダークサイドってこと いや、夜店の列に並んでいたってことが、そう認識させているだけで 夜店かどうかいささか怪しい物がある まずカラフルなのきが無い 色とりどりの裸電球もない ベニヤ板で出来た簡素な台もない 何より活気がまったくない 月明かりに照らされた有田ミカンの段ボールが更に暗い雰囲気に拍車をかけた しかし俺が一番度肝を抜かれたのは店主だった 異邦人なのである 厳密に何人であるかは解らないが日本人には有り得ない特徴が顕著に表れていた しかも偶然合わせた目をそらしてはくれない 少しだけ振り向いて見ただけの異邦人ならば軽い会釈でご機嫌を伺う術は知っている だが10秒過ぎようとする今もガッチリ目が合ったまま 俺がちょいとしたヤンキーならば喧嘩の一つや二つ始まっている 仮にお互いが良き年齢のイカした男女なら恋の福音は打ち鳴らされかねない 極度の重苦しい空気が沈黙を作る そんな折り頭上から 「フスーッ!!フスーッ!!」 と獣の威嚇音が 見上げると緊張感に耐えられなくなったフランケンが破壊衝動に襲われている ヤバい! フランケン以外の連中が同時に思った 勿論、店主も例外じゃなく 「冷やかしじゃなかと?買わんとやったら帰って」 方言混じりの流暢な日本語が店主から発せられた 恐怖を打開するべくの行動だろう 店主は体を小刻みに震わせじっとりとした汗が滝のように流れている。その姿に恐怖の色は隠せない しかし、この流暢な日本語が優しき破壊神フランケンの耳には心地よくなかった 突然店主の首を片手でつかみ軽々と持ち上げた どんな父親でも高い高いするときは首を掴んでやらないが高さの位置関係は良きパパと生後半年の赤ん坊のそれであった 今ここで繰り広げられている殺人事件をどうやって丸く収めようか考える、が如何せん小5 良策が簡単に出るわけがない 「おじさん俺これ貰うよ!100円でいいよね」 有田ミカンの段ボールに入った変わったベルトを手にとり、商品を買うことで事件を未遂のまま終わらせようとした これが見事に成功した キリングマシーン改めフランケンも所詮小5 誰かが手に入れた玩具に興味は移る 綾ちゃん隼人フランケンもそれぞれ箱を物色して100円を置いてその場を離れた 去り際 「きさんら呪ってやるけんね~!」 咳き込む店主が言っていたのが耳に残った
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