叫んだ声は木霊になって還る

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僕は梢のことを何も知らない。それだけは知っている。 僕は知らない。梢が何を考えているのか。何を望んでいるのか。何が言いたいのか。 僕は、生活の大半に目を閉じるようにした。暇さえあれば目を閉じた。周りから見れば眠そうな人だと思われていそうだけど、僕は眠たくて目を閉じていたんじゃない。 梢を理解しようとしたんだ。この世界で色彩がないこと、視覚から情報がないこと、愛する人の顔さえ見れないこと。それは僕にどのような意味をもたらし、梢にとってどのような意味をもたらしているのか。 僕は目をつぶりながら考える。考えながら寝てしまう。 なんだ、やっぱり寝てしまうんじゃないか。自分が不甲斐ない。
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