叫んだ声は木霊になって還る

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その日は最低の気分だったからお金を稼ぐことにした。お金を稼げば、その日に生産性があって、意味があって、価値がある、なんてことを言いたいわけじゃない。でもぼーっとつっ立っているのが嫌だったから、ただ、働いた。その日は労働者として社会に貢献したんだ。 けれど一生懸命働くことは気持ちがいい。人の役に立っていると実感できればなおいい。 ただ、僕が恐れているのは、働いて働いて働いて、そのうちに何かを忘れいくこと。 僕は梢の言葉を思い出した。 「何かを恐れることが一番恐いんだよ」 梢は目の見える僕よりも、色んなことが見えているんだと思った。
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