叫んだ声は木霊になって還る

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夕日。太陽が赤い血を吐き出してる。夕暮れ。空の青と混ざり、薄く紫色が広がっていた。 僕の影は誰かに触れたくて、一生懸命に伸びていた。 僕は太陽の吐く血を身体中に浴びながら、手を太陽にかざす。光が、手を通り抜けて、僕の血を写す。血。赤い液体。僕の中を駆け巡ってる。ビートに合わせて高速で踊ってる。心臓は生命のダンス。でも僕はつっ立ってるだけ。誰かの返り血を浴びてるだけ。 手首なんて切らなくても、すでに血だらけだって誰かが歌ってたのを思い出した。 続けて、梢の言葉も思い出す。 「痛い?見えすぎると痛いんでしょ?」 梢は僕に聞いたんだ。物が見えすぎても目に痛みはないよって僕はそのとき笑ったんたけど。 でもやっぱり痛いね。 知りたくない真実とかさ、見えすぎると、やっぱり痛いよね。 夜が来る。闇が深くなる。僕は目を閉じる。 何も見えないほうが楽なのかな、梢。 梢は何も答えなかった。
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