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「投げてなんかいないわ!蹴ったのよ!そんなことどうでもいいから、ちゃっちゃとレベルアップして」
桜がそっぽを向いて言った。
「やれやれ、困った姫様だこと」
俺の呟きは、桜の耳には届かなかった。
「雪人殿、こちらへ」
哲也と呼ばれていた中年のオッサンに呼ばれた。
…ってか殿って…
断る理由もないので、ついていく。
桜は不機嫌のままだった。
「ボスは何もわからない貴方に、親近感を覚えているのですよ」
廊下を歩きながら、何気なく哲也が言った。
「…どういう事だ?」
俺は聞いていた。
「ボスは記憶喪失『らしい』のです。」
「『らしい』?桜も俺と似た状況だったのか…?」
「みたいですね、実際あのようなボスは初めて見ました。」
「んで、なんで記憶喪失の桜が、ボスなんだ?」
俺には疑問だった。
記憶喪失の女の子を、長とする意味もわからない。
「なぁに、簡単な事ですよ。
…あの人の属性にこのアジトの全員が倒された…からです」
「…記憶を無くしても尚、強力な力の持ち主って事か…」
俺はやっとすっきりした。
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