3人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、お前は?」
「やっぱ………蛍姫様かな」
「おおー!!王道来たなぁ」
一人が照れ臭そうに口にした名前に、場は盛り上がる。
「やっぱいいよなぁ…まさに姫って感じで」
「おしとやかで慎ましやかでさ」
「一歩引いたあのソプラノ…堪んねぇな……」
「ふむ…」
一通りの発言を聞いていたその人、騎士長ルーベンスは、手にしている小さな紙切れに目を落として言った。
「この分だと今回も蛍姫様が上位に来るな」
その言葉に一同は顔に思案の色を浮かべたが、まもなくばらばらと頷く。
それをルーベンスが確認した後、気が付いたように一つの声が上がった。
「あ、でも俺、今回は…
真珠姫、も気になる…かな」
「…」
その言葉にルーベンスが気遣わしげに辺りを見回し一人の男の姿がないことを確認したのを、しかしその場にいた誰一人として気付かなかった。
「え?何お前。ソウイウ趣味?」
「うっわー、もうフェチの領域だね。犯罪だけは止めろよ」
「っな…犯罪って、何でだよ!」
「…皆、ちょっと」
扉の外の近付く足音にルーベンスは口の前に人差し指を立て沈黙を促しながら、瞳では足音の主を探る。
まもなくその正体がわかると、―――つくづくあの男は姫の名出るところに現れる奴だと―――ルーベンスは人知れず苦笑した。
最初のコメントを投稿しよう!