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「…やはり石人形の貴女にはわからないのだな」
「…」
彼らしくもない、挑発的な口調。
憎しみを隠そうともしない声色。
「…人形?」
ここまで感情を表出して私に向かう彼を、私は知らない。
「蛍姫様から聞いた。貴女は代々、玉石の姫の命で動く戦闘人形だと」
いや、今彼が対峙しているものは、レディパールという一個人ではないのだろう。
きっと、もう彼の海色の瞳に、「私」の姿は映らない。
私の言葉が彼の表面を滑り、その裡に届いていないと感じたとき、私もまた、彼の姿を見失った。
「私は…石人形ではない」
「貴女は輝きを宿さぬ人形だ!
貴女だけではない!
輝きをなくした珠魅の全てが人形だ!
他人をいたわる心を忘れ、
涙を流せなくなった私達。
滅ぶべきは姫様ではない!
滅ぶべきは私達だ!」
藁をも掴む水に溺れた者のようでもあったし
親を探しさ迷う迷い子のようにも見えた。
私はこれよりずっと後に気づくこととなる。
これが私が最期に見た「アレクサンドル」の顔であったと。
「アレク!言葉が過ぎる!」
「そんな愚かな珠魅を守る貴女を、私は許せない!
死んでくれ、パール!!」
目の前の迷い子は世界を恨み、今にも泣き出しそうな顔で私に刃を振り上げた。
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