第一章 松尾家

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「今日は誰とクラブに?」 頼子は奈美に聞いた。 「ん?あぁ…前にクラブで知り合ったって言った舞って子と、あの西岡の一人息子だよ。」 勝彦と一緒にオレンジジュースを飲みながら奈美は答えた。 舞って子は、この田舎の子ではなく、クラブがある街の子である。 奈美の美しさはクラブでも目立っていて、舞から声をかけてきたらしい。 それ以来、連絡を取り合うようになったようだ。 そして、あの西岡の一人息子とは、この頼子や奈美が育った田舎の大地主、西岡知宏の25歳になる一人息子、武司の事である。 親はクラブがある街でも、数多くの会社を経営し、いわゆる地域の顔役と言う存在である。 奈美は武司と遊ぶことが好きらしい。 それは大地主の一人息子だからクラブではVIP席に座れ、待遇も良く優越感に浸れるからである。 そして夕食を食べ終えた時分に、頼子の夫、隆太が帰って来た。 頼子は隆太を見るたびにドキドキする。 身長は平均的だが顔は整っていて、髪型はスキンヘッドだが、それがまた頼子のタイプなのである。 隆太は頼子を見ると優しく微笑んだ。 頼子も隆太に微笑み返す。 夫婦だけの情のこもった笑みだ。
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