第一章 松尾家

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「奈美ちゃん今日は出掛けるの?」 隆太は奈美に話しかけた。 少し苦笑いして 「はいはい。邪魔者は消え去りますよ。」 そう答えた奈美に対して頼子と隆太は笑ってしまった。 「お姉ちゃん帰るの?」 勝彦は寂しそうだ。 また来るね…と言い頭をクシャクシャっと撫でた。 じゃあね、と頼子に挨拶をして奈美はスポーツカーに乗り込みクラブへ走らせた。 奈美の車を見送ってから家に入り、夫に話しかけた。 「明日は日曜だから、家族でピクニックでも行かない?」 すると夫は悲しそうな顔をして 「今夜から出張なんだ。すまん。」 夫は仕事が出来、この年齢では一番の出世街道を歩いている。 その代わり毎月何度も出張がある。 息子の勝彦も最近は慣れたのか父親が家をしばらく離れても泣きはしなくなった。 昔は泣きじゃくっていた。 泣きじゃくっていた勝彦をなだめる為、夫が出張に行く日の夜は頼子は勝彦をドライブに連れていくようになった。 それは泣かなくなった今でも習慣になっている。 「今夜はママとドライブだね。」 そう言うと勝彦は、 やったー と叫んだ。 ドライブが大好きなのだ。
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