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昨日も見た猫と犬のラーグノムが、商人に襲い掛かるのを目撃し、助けに入った所だった。
「ッたぁっ!」
先行したネトシルが、商人の背負い荷に爪を立てるラーグノムに電光石火の蹴りを入れ、
「はっ!!」
追い付いたエルガーツがすかさず斬り込む。
予想外に立て直しは早く、避けられて脚をかすめたに過ぎなかったが、足を傷付けたなら次はない。
ラーグノムと間合いを取って対峙するエルガーツ。
その背後に突如気配が生まれた。
「フぎャぁァ!」
「なっ!?」
二匹目のラーグノム!
キメラはその性質故に単独行動が多いと油断していた!!
「ッこのっ!!」
咄嗟に剣を振るう。
手に食い込む鋼の重さ。
間に合わない!
ラーグノムの黄ばんだ牙と喉の奥を見た。
次の瞬間見る事になるだろう自分の肉片の幻影を見た。
想像される痛みに全身が総毛立ち、思わず瞼が視界を閉ざして残虐な事実の侵入を防ごうとする。
刹那、
その横面に飛ぶ殴打!
ゴッ!!
「ギゃウっ!」
走る赤い一筋の残像。
擦れ違う瞬間にネトシルが怒鳴る。
「何ぼさっとしてる!?」
その声に打たれ我に返った。
視界は再び開いて正しい機能を取り戻す。
瞳には光が宿った。
半ば振られた刃を渾身の力で素早く返し、こちらが背を向けた隙に飛び掛かってきた手負いのラーグノムの首を振り向きざまに一閃、薙ぐ。
スピードの乗らない剣は骨に止められたが、傷口から湿った音を立て赤い花が咲いた。
横目には、ラーグノムが怯んだ隙に脇に回り込み、ナイフを振り下ろしているネトシルが映る。
ザシュ、という音と共にナイフが過ぎた後は、一瞬にして全神経が断ち切られたラーグノムの体が残った。
糸が切れたように崩れ落ちるドサリという音を合図に、朝の戦闘は終了した。
痛みは少なく。
出来るのなら一瞬で。
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