47人が本棚に入れています
本棚に追加
やがて、操舵手のいなくなった天馬は、バランスが保てなくなったのか闇夜の空へと消えていく。
そしてアティアもまた、衝撃に巻き込まれてしまったのか、意識が遠のいていく
そんな中、仮面の男の声だけが、眠っていく彼女の耳へと鮮明に響く。
「…私を追いたければ、隣国のオルデイン公国に潜む、ー夕闇の断罪者ー達を探してみなさい。皇女よ…。」
薄れゆく意識の中で、彼女の耳にはその言葉が、はっきりと残っていた…。
オルデイン公国の…
夕闇の断罪者…
「…ふっ。…あどけない顔をしていましたが…、してやられましたね。」
一人取り残された、漆黒の鎧を纏う仮面の男は祭壇の前にいた。
祭壇には、彼の探し求めていたものはなかった。
「ドルヴァ。」
仮面の男は囁くように呟く。
「…はい。」
するとどこからともなく、漆黒のローブに身を包んだ老人が、男の目の前に現れ床にひざまづいている。
そして…
「…ソーマ。」
男はさらに呟いた。
「ここに…。」
ひざまづくドルヴァと呼ばれた老人の横に、今度は漆黒の剣士服を纏った女が現れ、仮面の男に敬意を表するよう胸に手を当て、顔を俯かせている。
「ドルヴァ…。そなたにはこの国の今後の執り行いを任せたい。そして…」
剣先をドルヴァと呼ばれる老人に向け、そう言った後、男はさらにその大剣の剣先を、自らがソーマと呼ぶ女にも向けた。
「ソーマ、貴女は2人を追い、オルデイン公国に赴いて見事、オーブを奪い取って見せてください。手段はいといません…。それと、わかってはいると思いますが、あの話は今もなお進行中です。それを忘れなきよう…。」
「はは!!」
「御意に。」
仮面の男の命に2人は答え、仮面の男に一礼するとまた一瞬で何処かへと消えさってまった。
するとどこからともなく。鐘が鳴りはじめた。
あれほど燃え盛っていた紅蓮の炎も今では、燃えるものが無くなったせいか、小さな火が点々と残されているだけだった。
酷く荒廃した神殿内にもその鐘の音は、小さく鳴り響いている。
男は口元を釣り上げ笑みを浮かべ、神殿内に開いた大きな穴から夜空を眺め、静かに呟く。
「夜明け、か…。ふふふ…。」
男はふと、自らの仮面をとりはずし、歓喜の表情しながら言った。
「…今宵もまた、我の眼に映るは鮮血に染りし暁の月…。[始まりの鐘]は鳴った…。さあ、戦乱の世の始まりだ!!!」
最初のコメントを投稿しよう!