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「ちっ、違いますリドウェン様!!私はあの者達の事を言っていたのです!!」
デュランが指さすは遠く離れた地に点在する露店。
みなこの遠征出発式を盛り上げるためにと出店しているのだろう。
もくもくと空高く、盛大に舞い上がる色つきの煙はこちらにも届き、その香ばしい香りを漂わせ人々の鼻をくすぐらせた。
「いや、戦場に向かう彼等の気持ちを察する事が出来ない僕は、ダメな奴だ…。」
デュランは慌てる。
さっきまでのあの落ち着きは、今はもう見られない。
もの凄いうろたえようだ。
「た、確かに!!!見方を変えればあのような催しが必要かもしれませんです、はい!!騎士団の面々も、悲しみに覆われながら見送られるよりは、明るい雰囲気の中で見送られたいとも思っているはず!!!!ええ、きっとそうです!!それをわからず多大な失言を吐いた私をどうか、お許しください!!」
その口数の多さから、彼の必死さがよくわかる。
リドウェンは軽く微笑しながら、自分の前にひざまずくデュランに手を添えた。
「ふふ、冗談だよ。確かにデュランの言うように不謹慎でもあるけどね…。これから戦地に赴くんだし。でもね…、僕は思うんだ。こうやって明るい雰囲気の中で皆に見送られたなら、彼等も戦場で苦しんでも、『帰ればこんなにも楽しい祖国が待ってる…』なんて思って必死で生き抜いてくれるんじゃないか…てね。」
リドはそう語った後、晴天の空を見上げる。初春には珍しい、強い陽射しが眩しいのか手を添えながら。
「王子…。王子の慈しみなるお心…痛み入ります…。」
デュランは敬意を表し、胸に手を当て深々と頭を下げるのだが、その姿にリドウェンは苦笑しつつ、彼に顔を上げさせるのだった。
「…じゃあ、僕はディース兄さんの所に行ってくるから。」
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