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形式ばった、堅苦しく窮屈な出発式はすでに終わりを告げ、後はもう、出立を待つだけとなったエマオス軍。
各隊の騎士達は姿勢よく直立している。
さらにその先の城門前では、複数の近衛騎士によって周囲を固められた、リドウェンと同じ髪の色をした人物が各隊の騎士隊長なる者達に指示を与えていた。
リドウェンは開ききった城門を駆け抜け、その人物の元に走り寄る。
「兄さん!!!!」
その声に、周りにいた近衛騎士達や各騎士隊長らが気づきし、声の出元に視線を向けた。
「リドウェン。何度言ったらわかる?皆の前ではディース将軍と呼べといつも言っているだろう?」
自分の予想に反し、意外にも冷たくあしらわれたリドウェンは、面を食らったかのように駆け寄るのをやめ、幾ばくか肩を落とし気味にうなだれた。
「…すいませんでした。ディース…将軍…。」
蒼色の髪の青年は、鬼気迫る表情でリドウェンを睨めつけている。
そのやりとりを見た周囲の騎士達は、どよめきを隠せない。
「わかったのならいい。…お前達、もう下がっていいぞ。」
「は!!」
リドウェンに冷たい言葉を投げかけた青年は、自分の部下である騎士に、そう指示を出した後、ゆっくりと歩み始めた。静かに歩み寄る彼の瞳には、おどおどとしたリドウェンの姿が映し出されている。
「リド…。」
「は、はい!!将軍!!」
姿勢を正し、直立不動で将軍を前にするリドウェン。
髪の色はまったくの同色。体格や顔つきがいくら違っていてもこの2人が、互いに血族関係にある事が、容易にわかる。
ディースは、リドウェンを更に大人にしたような容姿だった。
2人は城門の中へと入り、人気の少ない場所へ向かった。
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