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「さっきは悪かったね、リド。」
鬼気迫る表情をしていたディースの表情は突如一変し、満面の笑みになった。
そんな彼にリドウェンは心底ホッとして、胸を撫で下ろす。
「兄さん…。僕の方こそ、周囲の目を気にも留めず、兄上に恥をかかせる様な事をしてしまって…。」
「うん。わかっているのならいいんだよ。私達は確かに、他にない大切な兄弟だ。しかしね、けじめというものは必要なんだ。」
「はい。」
彼の話を、リドウェンは真剣な眼差しで聞いている。
「普段ならいくらでも、私の事を兄さんと呼んでくれても構わない。だけど国務や軍務に従事している時は、やはり将軍と呼んでくれなくては、皆に面子が立たないんだ。今は兵達も傍にはいない。いつも通り、兄さんと呼んでくれ。」
「本当にすいませんでした。…ディース将軍閣下。」
「こいつ~、今はいいと言っているだろう~。」
2人はじゃれあい始めた。
傍目から見れば、本当に仲の良い兄弟に見えるだろう。
実際、2人はとても仲が良かった。
幼い頃、この2人は魔物によって大切な母親を殺されたという悲壮な過去を持っている。
元より仲は良かったのだが、そんな過去があったからか、周囲の人間が思っているよりも、2人の絆は深かった。
「ははは。…………兄さん。」
ふざけあいをしていた最中、リドウェンは突然神妙な面持ちで、ディースを真っ直ぐに見つめた。
「ん?どうした??」
「生きて……帰って来てください。」
その言葉はとても深く、そして重みのある言葉であった。
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