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ディースはリドウェンのその様子に少し戸惑うも、苦笑しながら答えた。
「私を誰だと思ってるんだ?人より【平原の蒼き狼】と謳われた、エマオス王宮騎士団ディース将軍閣下だぞ?」
ディースは不安がる彼を前にして胸を高々と張り、誇らしく言う。
その姿にリドウェンも…
「そして、かの大戦乱で大功を成し、この国の礎を築いた聖騎士エマオスの血筋を引き継ぐ者。」
ディースと同じく、誇らしげに言った。
「そう…。私も、お前もな。だから安心しろ。それに、私には大陸でも名高い精鋭達が集う、聖騎士部隊がついている。」
「そう…ですね。きっと、大丈夫ですよね。」
「…その分、こちらの守りは残された王国軍のみになってしまうのだが…。まぁ今は、各国が魔物討伐の為に同盟を組んでいるから大丈夫だろう。それに王国軍であれば、仮に魔物や賊等がやってきたとしても、そんな者達には引けを取らない。」
「兄さんの右腕である王宮騎士団副司令官のデュランも、こちらにいますしね。」
リドウェンは、遠くで兵士一人一人に激励しているデュランの姿を見た。
心なしか、そんな彼の背中には寂しさを感じさせるものがあった。
「…あいつには可哀想な事をするが、人事的に仕方のない事だ。私がいない間は、王とこの国を頼んだ。私に何かあったら、お前は次代のおー…」
「そんな言葉、聞きたくありません。僕はただ、兄さんが無事に帰ってくる事だけが、望みなのですから。」
おとなしく、か弱い印象を持つリドウェンが、突如強気な眼差しでディースを見据える。
「わかっているよ…。私は必ず帰ってくる。……リド、お前はまだまだ強くなれる、早く強くなるんだ。」
ディースはリドウェンの両肩に手を乗せ、真っ直ぐに彼を見つめる。
互いに見つめ合う両者の眼は、一点の曇りもなく、遠くの彼方まで見渡せそうな、この透き通る青空に負けない程澄んでいるのであった。
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