第1章第1節~小国の王子~

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「…カイムは馬をのけ反らせたままで戦っているんです。」 傍観者に徹する二人の間に、トレイスが身を挟むような状態で現れる。 その言葉にロスタムは、呆気に取られながらも納得した。 「そうか!!馬をのけ反らせ、相手より高い位置にいれば、それは接近戦ではなく近距離戦となる!!」 「それでか…。風切音の大きい方が手数が多いと思ってはいたが、通りでな。」 デュランも納得した様子でいる。 少し離れた所では、未だに土埃が落ち着く気配はない。 二人は円を描くようにして立ち位置を変えながら戦っているのだ。その度に土埃が舞う。 「へー。カイムの奴、意外と器用なんだな。」 ロスタムは妙技をもって善戦するカイムに感心するのだが。 「……あれは口で言うほど簡単な技ではないですよ。カイムはいつも訓練が終わった後、ギルド周辺の森の中で一人練習してましたから。」 「見てたのか?」 ロスタムは意味ありげな顔つきで、口元をニヤつかせながらトレイスに問くが、すぐに即答される。 「…いえ、全部自分で言ってましたから。いつか一騎打ちをする際に使いたいとも。」 「ふ~ん、…でも珍しいな。お前さっきは[くだらない]とか言って、見ようとしなかったじゃないか?」 「……カイムが意外と善戦していると聞いて興味を持っただけです。」 「そりゃそうか…。いっつもすぐ負けてたもんな、カイムの奴……。デュランさん。負けたら本当に官職を交代させるんですか?」 ロスタムは、戦う二人を瞬きもせずに見つめているデュランにそう聞くと。
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