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「…カイムは馬をのけ反らせたままで戦っているんです。」
傍観者に徹する二人の間に、トレイスが身を挟むような状態で現れる。
その言葉にロスタムは、呆気に取られながらも納得した。
「そうか!!馬をのけ反らせ、相手より高い位置にいれば、それは接近戦ではなく近距離戦となる!!」
「それでか…。風切音の大きい方が手数が多いと思ってはいたが、通りでな。」
デュランも納得した様子でいる。
少し離れた所では、未だに土埃が落ち着く気配はない。
二人は円を描くようにして立ち位置を変えながら戦っているのだ。その度に土埃が舞う。
「へー。カイムの奴、意外と器用なんだな。」
ロスタムは妙技をもって善戦するカイムに感心するのだが。
「……あれは口で言うほど簡単な技ではないですよ。カイムはいつも訓練が終わった後、ギルド周辺の森の中で一人練習してましたから。」
「見てたのか?」
ロスタムは意味ありげな顔つきで、口元をニヤつかせながらトレイスに問くが、すぐに即答される。
「…いえ、全部自分で言ってましたから。いつか一騎打ちをする際に使いたいとも。」
「ふ~ん、…でも珍しいな。お前さっきは[くだらない]とか言って、見ようとしなかったじゃないか?」
「……カイムが意外と善戦していると聞いて興味を持っただけです。」
「そりゃそうか…。いっつもすぐ負けてたもんな、カイムの奴……。デュランさん。負けたら本当に官職を交代させるんですか?」
ロスタムは、戦う二人を瞬きもせずに見つめているデュランにそう聞くと。
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