第1章第1節~小国の王子~

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「あぁ、もちろんだ。規則だからな。」 このエマオス王国軍において、軍事的地位を上げるためには二つの手段がある。 一つはごく一般的な方法で、戦などで戦功をあげ、その名を轟かせ上官達に認められる事。 そしてもう一つ。 上官である者に対し何らかの形で一騎打ちをする機会があった場合、それに勝つ事ができたならば、その上官がついている官職と交代できる、というもの。 この制度は王国軍に在籍する若人達にとっては、夢のような制度であった。 なぜならば戦功を上げようにも、大きな戦は勿論の事小規模の戦さえない昨今の大陸情勢。 そんな中で名を上げるなど難しい事であった いくら魔物が現れたとしても魔物退治は王宮騎士団の役割だった事から、王国軍の出る幕などなかったのだ。 若い兵達は訓練と、賊の侵入を見張ったり等する国の警備に明け暮れる毎日。そんな毎日では、彼等の士気は下がってしまう。 エマオス王国の軍事力は、兵力数で言えば5大国の内で最も貧弱。 しかし、質高い勇猛なる精鋭達がいるおかげで軍事力としては一応他国にひけをとらない程の力はあった。 それをこの国でというよりはこの王国軍内では、あまり培われる事のない軍功制度や世襲制、または年功序列制度やらで、軍事的地位を一定の者達に縛り付けてしまっていては、軍事力はおろか、国力の減退にまで繋がってしまう。 その事を危惧した当時のエマオス王はこのように、爵位を持たぬものでも、能力さえあれば、家柄など一切関係なく高い軍地位を与えるという妙案を打ち出す事で、国の繁栄と軍事力の保持を進めていったのである。 この制度があることによって、一般兵でも力さえあれば、一応は容易に出世ができるのできた。 勿論、これは軍事だけにおける言わば[特例]であり、国政や公職に携わる文官などの起用は一般に、家柄が貴族出身の者を選出している。
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