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「…だが、いくら上官に勝利したとこで、王国軍の高官止まりの才覚では話しにならない。上を目指すものにとってはただの通過点にしかすぎん。彼等の行き着く所、つまり目標は王宮騎士となることだ。」
デュランは険しい目つきで見えない二人の状況を模索している。
土埃は、まるで霧のように宙を舞い続けていた。
雌雄は決される事なく二人の争いは依然として続く。
「力さえあれば誰でも王国軍指揮官や隊長格になれる。しかし将としての才覚が見受けられない場合はそこどまり。そして王宮騎士団ではさらに激しい競争があるわけなんだけど…。ま、俺はそんな殺伐とした雰囲気の王宮騎士団が居心地悪くてやめたんだけどね。」
長引く決闘。見ている方も疲れを覚えたのかロスタムは、後ろ首に両手を回すと楽な姿勢をとり、そしてデュランの言葉に少しばかりの補足をする。自分の経歴も付け加えて。
ケイトとカイム、両雄の攻防は当初よりもさらに加速度を増す。
猛る軍馬から発せられる鳴き声の大きさが、それを物語っていた。
「……惰弱ですね。」
トレイスがロスタムに対し、聞こえるか聞こえないか程度の小声で静かに呟いた。
が、ロスタムはそれを聞き逃さない。
「献身的と言ってもらいたいな。なぁっはっはっは!!!!」
大きな口を限界にまで開け、再び大声を張り上げながら笑ったロスタムだが、彼の笑い声が響き渡った後、空気が変わった。
「……来る。」
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