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トレイスがそう呟くと、土埃の中から木剣が弾きだされたようにして現れた。
剣は孤を描くように回転しながら宙をまっている。
「…勝負あったか…?」
誰もがそう思った瞬間、突如土埃の中から大きなシルエットが映し出されたかと思うと空を切るかのように凄まじい勢いで、ケイトが視界に現れた。
「私は…負けない!!」
ケイトは軍馬の尻を叩き、高々と跳躍させ空に舞う木剣を掴み取る。
そして見事な着地を三人に見せしめた彼女は言う。
「中々…やるようになったじゃない。」
粉塵が収まり、そこにいななく軍馬と共に現れたカイム。
冷や汗を流すケイトとは対象的に彼は余裕の表情で笑みを浮かべている。
「さぁ…。そろそろ決着をつけようぜケイト?」
カイムは己の武器である、槍に模した棒を天高く掲げ片手で器用に回しながら言った。
「…そうだな。では私も、本気をだすとしよう。」
ケイトも左右に木剣を振り、カイムの方へと剣先を向けた。
「強がり言ってんじゃねえよ!!後で泣きを見るぜ!?」
「泣きを見るのはお前の方だ!!!」
両者の軍馬は一斉に地を蹴り上げ駆け出した。
後方で見ていた三人の所に巻き上げられた土が振りかかろうとしている。
デュランとトレイスはなんなく避ける事ができたが、ロスタムは動きが遅いためかまともにそれを浴びてしまう。
「ぶへぇ!!」
とそこへ、
「だ、大丈夫!?ロスタム!!?」
「大丈夫じゃないよ全く~。何だって俺がこんな目に…。」
ロスタムは自分が受けた仕打ちに悪態をつきながらそう言う。
「こ、こら!!お前は一体誰を前にしてそんな口を聞いている!?」
デュランの突然の怒声を耳にしたロスタムは、土によって遮られた視界を取り戻そうと目の周りに付いていたそれを手で拭う。
「お、王子!?」
見れば目の前でエマオス王国第2王子リドウェンが、心配そうな顔つきでロスタムを見つめていた。
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