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男の遠い視線の先には、幾重にも高く積み重なった階段と、その頂上にある高尚な造りの祭壇。その横には、軽微でいて、そして煌びやかな甲冑に身を包んだ女がいた。
額から血を流し、祭壇にもたれかかっているように見える。
女は男を睨みつけ、歯を食いしばりながら言う
「あなたは一体…!?
何の為にこんな事を…?!父上はどうされたのです!!?」
「あぁ…。あの老害ならこの剣で一突きにしました……。」
仮面の男は大剣を高々と天にかざし、その厚く広い刀身を見て恍惚の表情を浮かべていた。
「なっ…!?
父上が…そんな……。」
その言葉を聞いた女は絶望に打ちひしがれたのか、落胆し、次第に滑り落ちていくようにして、祭壇の壇上から床へと体を落としていく。
そんな彼女を見て、男はあざ笑うかのようにしてまた喋りだす。
「人は…、脆いですね……。こんなにも容易く命が失われてしまう…。さぁ皇女よ…、私は貴女の頭上にある紋章に用があるのだ。死にたくなければおとなしくそれを渡すのです。」
「こっ、これがどういうものか、解ってて言っているんですか!?」
熱風が吹き荒れているというのに、女の顔は突如、急速に青ざめていった。
「愚問ですよ皇女…。渡す気がないのならここで潔く死んで貰います。」
仮面の男はかざしていた大剣を片手で軽々と振り下ろすと、その剣先を女へと向けた。
妖しく光る刀身は極度に研ぎ澄まされており、その刀身にはまるで、鏡にでも映ったかのように仮面の男の顔が浮き出ている。
火の勢いは増すばかり、業火にさらされていない場所はもう、女がいる祭壇付近のみとなった。
彼は祭壇へと階段を歩み寄るのだが…
…λξφυμζο…
【…蹂躙せし天空の覇者は、宿主の問いに大いなる力を持ってその答えを示さん…】
どこからともなく声が聞こえる。
すると…
「フォースウィンド!!!!」
「む…。風の上位魔法ですか…。」
一陣の巨大な旋風が神殿の壁を突き破り、まるで意思を持っているかのように彼の周りを取り囲む。
彼は両手で自身の身を庇いながらその場に立ち尽くす。
猛烈な勢いで旋風を捲き起こす、無数の刃を模した緑風が、辺りで猛威を振るっていた業火を瞬時にして消し去り、なおも男に対し攻撃の手を緩めない。
「アティア様!!?ご無事ですか!?」
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