~プロローグ~

4/6
前へ
/142ページ
次へ
突き破られた壁の外から、純白の翼を持った天馬が勢いよく駆け下りてくる。 しかし、渦巻く炎に着地点を遮られ、うまく降り立つ事ができない。 天馬の馬上には、その天馬の馬体の色に酷似した純白の甲冑に身を包む女がいた。 「ヴァルナ!!!!いつ戻ってきてたの!?」 「先ほどです!!さあ早く!!私のペガサスの後ろに乗ってください!!!」 ヴァルナは着地することができないとわかると、己がアティアと呼んだ女に天馬の背へと飛び乗る事を促す。 アティアは燃えさかる業火の中、意を決して飛びつくが距離が足りないせいで、自ら地獄の業火の中へと落ちていってしまう。 「きゃぁああ!!」 「くっ!?」 ペガサスを己の手足のように操るヴァルナは、炎の渦を掻い潜り、落ちていくアティアを間一髪のとこで救い出した。 「よかった…さぁ、グズグズしている暇はありません。急いでこの場から離れましょう!!」 「待って!!父上が!!!!」 アティアは神殿の出口を悲壮な表情で見ている 「教皇もここにおられるのですか!?」 彼女が驚いた顔をしながらアティアを見ると、下から不気味な笑いと共に上を、ペガサスに乗る二人を見て男が言う。 「ふふ…。私が殺してしまいましたがね…。あなたは確か…カミラ聖教国ラール教皇の腹心である、[理の三賢者]の1人…。風神のヴァルナ・・・。お目にかかれて光栄だ…」 魔法の攻撃を耐え切った仮面の男の周辺で、燃えカスが砂塵のように舞っている。 「そういうあなたは一体何者ですか!?教皇を…殺した…?…何故!?」 「…名乗る程の者ではございません。」 ヴァルナは鬼気迫る表情で男を責めただす。そしてその横ではアティアが、震えながらうずくまっていた。 「…教皇をなぜ亡き者にしたかに関しては、お答える必要はありません。なぜならば…貴女達はここで死ぬんですから」 彼はそう言い放った途端、大剣を大きく振りかぶった。 それと同時に優美な天馬の翼が、大きく広がる。 「くっ!!!!この下郎が…。アティア様、一旦この場から離れます!!しっかり捕まってて下さい!!」 天馬は天高く飛び立とうとするのだが… 「いきますよ…」 そう一言、男が呟く。 すると彼の持つ大剣の刀身部分がどす黒い光を妖しく放った。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加