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突き破られた壁の外から、純白の翼を持った天馬が勢いよく駆け下りてくる。
しかし、渦巻く炎に着地点を遮られ、うまく降り立つ事ができない。
天馬の馬上には、その天馬の馬体の色に酷似した純白の甲冑に身を包む女がいた。
「ヴァルナ!!!!いつ戻ってきてたの!?」
「先ほどです!!さあ早く!!私のペガサスの後ろに乗ってください!!!」
ヴァルナは着地することができないとわかると、己がアティアと呼んだ女に天馬の背へと飛び乗る事を促す。
アティアは燃えさかる業火の中、意を決して飛びつくが距離が足りないせいで、自ら地獄の業火の中へと落ちていってしまう。
「きゃぁああ!!」
「くっ!?」
ペガサスを己の手足のように操るヴァルナは、炎の渦を掻い潜り、落ちていくアティアを間一髪のとこで救い出した。
「よかった…さぁ、グズグズしている暇はありません。急いでこの場から離れましょう!!」
「待って!!父上が!!!!」
アティアは神殿の出口を悲壮な表情で見ている
「教皇もここにおられるのですか!?」
彼女が驚いた顔をしながらアティアを見ると、下から不気味な笑いと共に上を、ペガサスに乗る二人を見て男が言う。
「ふふ…。私が殺してしまいましたがね…。あなたは確か…カミラ聖教国ラール教皇の腹心である、[理の三賢者]の1人…。風神のヴァルナ・・・。お目にかかれて光栄だ…」
魔法の攻撃を耐え切った仮面の男の周辺で、燃えカスが砂塵のように舞っている。
「そういうあなたは一体何者ですか!?教皇を…殺した…?…何故!?」
「…名乗る程の者ではございません。」
ヴァルナは鬼気迫る表情で男を責めただす。そしてその横ではアティアが、震えながらうずくまっていた。
「…教皇をなぜ亡き者にしたかに関しては、お答える必要はありません。なぜならば…貴女達はここで死ぬんですから」
彼はそう言い放った途端、大剣を大きく振りかぶった。
それと同時に優美な天馬の翼が、大きく広がる。
「くっ!!!!この下郎が…。アティア様、一旦この場から離れます!!しっかり捕まってて下さい!!」
天馬は天高く飛び立とうとするのだが…
「いきますよ…」
そう一言、男が呟く。
すると彼の持つ大剣の刀身部分がどす黒い光を妖しく放った。
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