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体が重い。鉛を体に詰め込まれたのではないかと疑いたくなる程、思い通りに動かない。
追っ手の武器には薬か何かが塗ってあったのかもしれない。化け物らしい驚異的な回復力のおかげで傷は塞がりかけていたが、この脱力感だけは消えなかった。
一歩足を進める。
ただそれだけの事に集中を要する程、体は弱りきっていた。
激しく叩き付ける雨粒により濡れた体からは赤い雫が滴り落ちる。それが自分の血なのか、はたまた返り血なのかも、疲弊しきった俺にはよくわからなかった。
それでも一つだけ確かなのは、足を止めれば最悪の未来が待っているという事。
追っ手の人数はわからない。自分が何人の追っ手を殺したのかも、あの忌まわしい場所からどれだけ離れられたのかも、どこまで逃げればいいのかも、何もかもがわからない事だらけだ。
でも絶対に俺は立ち止まらない。あんな最悪の未来が俺の運命や宿命だと言うのなら、俺はそんなもの打ち壊してやる。
逃げ出したのはその第一歩。
これがどんなに罪深い行為だとしても、こんなところで、これしきの事で足を止めるわけにはいかないのだ。
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