書道~パワーアップ~

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ここは、本来銅筆が入院していた部屋。 医師の診断では、怪物をみたショックで気絶しただけとのこと。 部屋から出ていく医師達。 一人呟く滋賀。 「…俺のせいじゃないよな?」 「違いますよ。」 見ると、ベッドの銅筆が目を開けている。 「気が付いたか。」 「…今です」 「あ?何がよ?」 「消すなら…」 「お前…」 深くため息をつく滋賀。 「さっきの化け物見たろ?俺はあぁいう奴等と戦ってて、つまり…」 頭をポリポリかき、少しにやける。 「ヒーロー…って、やつだ。」 感心無さそうな顔で聞いている銅筆。 少しムッとする滋賀。 「つまり、お前を消すだのなんだのしねぇってことだよ。…あ、でも、できれば誰にも言わないでくれよ?」 「…私、病気なんですよ」 「見りゃわかる。っつか、人の話を…」 「悪い物がもぅ身体中にはびこってて、もう…長くはないらしいんですよ。」 「…はぁ」 「あ、すいません。見ず知らずのあなたにこんな話、困りますよね?」 「滋賀」 「…はい?」 「あなたあなたって。俺の名前は滋賀 優護(しが ゆうご)ってんだ。」 「あぁ。申し遅れました。私の名前は銅筆(どうひつ)。子供達に毛筆教えてたら、いつの間にかテレビに出させていただけるようになりました。…ご存知ありませんよね」 「あぁ。わりぃ。…やっぱり本名は教えらんねぇか。芸名だろ?それ。」 「…本名は、捨てました。僕がまだ幼かったころに父親の借金が原因で家族がバラバラになりまして、皆自分の名前を忘れてどこかで生活しています。テレビに出ていたら便りが来るかも知れないなども考えましたが…。もちろん、見舞いにも誰も来ません。」 力無く銅筆は笑った。
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