43人が本棚に入れています
本棚に追加
「…っやめろ…はなせよ…っ」
うすい金色の髪に青い瞳の端正な顔立ちをしたその少年は、大柄な男に顔を床に押し付けられ、声を張り上げた。
その手を振りほどこうと、少年は必死に身動きをとろうとするが、男との体格差がありすぎて微動だにできない。
そして、そんな少年を嘲笑うかのように大きな椅子に腰を下ろしている全身真っ白な老人が、ゆっくりと口を開いた。
「お前は天使にはあってはならない罪を犯した
…最大のな」
そう。
この少年は人間ではなく、神に仕え、人々に幸せを運ぶことを使命として課せられた、天使なのだ。
そして、老人の言う天界においての最大の罪とは
――――――――殺し。
たとえどんな事情があろうと、それは禁忌であり、何人たりともこの掟をおかしてはならない。
「お前はその手を血に染めた
じゃから、そんな穢れたお前には、罰を与えなければならん」
少年はキッと老人を睨んだ。
「これも天界の掟じゃ
罪を犯した愚か者には罰を
…悪く思うな」
そう言って老人は、押さえ付けられている少年の後ろで、きっちりと立って並んでいる用兵に、「やれ」と指示を出した。
そして、少年の翼に手がかけられる
「何すんだよ…っ!!やめ…」
そんな少年のか細い声は、ベリッという翼を剥ぐ醜い音にかき消された。
「ああぁ…っ」
とてつもない熱さと痛みが、少年を襲った。
「…っは…っ」
ぜぇぜぇと荒い呼吸を繰り返し、自分の身体を抱えこむようにしてうずくまっている少年の瞳からは、熱を持った涙がこぼれ落ちた。
何故こんなことになったのか…
少年は朦朧とする意識の中で、答えを見つけだすことは出来なかった―――
最初のコメントを投稿しよう!