第三章

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ふんふん♪と鼻歌を口ずさみながら、黒い服を纏い、赤茶がかった髪の毛を風になびかせ、真紅の瞳を持った青年は、夕飯のメニューを考えながらスーパーまでの道のりを呑気に歩いていた。 「今日は寒いからシチューにしようかな でもホワイトとビーフ どっちが…」 そんな青年の考えを邪魔するように、突然5、6人のサングラスをかけた男達が、目の前に立ちはだかった 「探したぜ~萱島 紘! 今日こそはまじで逃がさねえ!!」 男達のリーダーであろう男は、殺気を剥き出しにして紘に暴言を浴びせた。 周りに居た人間は、見ぬふりをしてその場から足早に立ち去る。 「…ねぇ ちょっと黙っててくんない? 今考えゴトしてるんだから」 そう言って紘は、男達の存在など気にも留めずにまた歩き出そうとする。 「…っざけんなよ! このまま通すと…」 男は紘の肩をつかんだ。 すると、紘の足がピタリと止まる。 「ねぇ 俺黙っててって言わなかったっけ? つかおたくら誰?」 「…っ」 紘に睨まれ、男達は金縛りにでもあったかのように、そこから動けなくなった。 (何だ…この冷たい眼は …こいつ尋常じゃない…!) 張りつめた空気が、その場を支配した。 「俺、買い出し行かなきゃだから。 じゃあねん♪」 ひらひらと手を振って、鼻歌を口ずさみながら紘はまた歩き出した。 「…っ舐めんなぁ!!」 そう言って、一人の男がナイフを手にかざし、紘に背後から襲いかかろうとする。 「だぁーかぁーらぁー 考えゴトの邪魔すんなって」 そう言うと、紘は素早く後ろを向き、襲いかかってきた男の手首をつかみギリギリと締め付けた。 「…っ」 男は、紘の手首をつかむ力に耐えられずに、ナイフを手から落とした。 「何? そんなに俺と遊びたいの??」 この男…一見笑っているように見えるが、眼は笑ってなどいない。 男は息がつまった。 「…なーんてね 俺ヒマじゃないから、君らの相手してる余裕なんてないの♪ …だから俺の気が変わらないうちに早く立ち去ってくんないかなあ?」 柔らかな言葉とは裏腹に、背筋も凍るような冷たい声。 「お…っおい…行くぞっ」 そう言って、男達は逃げるようにしてその場を走り去っていった。 「あ…雪」 白い結晶が、手のひらに落ちて消えていく。 「今日はホワイトだな~」 そう言って、紘はまたスーパーまでの道を歩き出した。
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