思春期

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その後、どうしたのかは僕自身覚えていない。 現実に戻ったらいつの間にか僕の部屋にいた。 ふと携帯電話のアドレス帳を見てみると、確かに落合百合の名前があった。 ホッとし、勉強に取り掛かろうとした。 バックの中をあさると、何も入っていなかった。 教科書とノート、忘れてきた。 時計を見ると午後五時三十分だ。 学校は午後六時三十分には閉まってしまう。 急いで自転車に乗ろうと家を出ると、自転車がなかった。 とにかく急がなければいけないので、学校まで全力で走ることにした。 中学校で野球を辞めた僕にとっては、久しぶりに長い距離を走るのはきついものだ。 その上全力疾走だ、時間が来る前にばてる可能性は高い。 それでも走るしかない。 何度か赤信号にぶつかったが、止まっている時間などないので、無視した。 自動車のクラクションが一度も鳴らなかった。 僕は運が良いのかもしれない。 やっとの事で学校に着いた時には六時二十分だった。 中に入ろうとしたら、ビーッ、という音が鳴り響いた。 僕は驚き、少し後ろに下がった。 だが、音は鳴り止まなかった。
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