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あの日、いろいろなものがなくなった。大事にしていた人形も、本も、家族のぬくもりも。ただ、どんなことがあっても、これだけは手放さないと決めた。
中に残された両親の写真。
私の大切な記憶の欠片。
「ユヨン。Avisが何を言ったかは知らないけど、そう思うのは君だけじゃない。世界中の人間がそう感じてるさ」
どんと胸に落ちてくるような言葉だった。世界中の人間が東京に恨みをぶつけようとしてるのは事実だ。
親を殺された憎しみを、子供を友人を失った痛みを。
その苦痛で満たされた世界を救済できると言われているAvis。その証を持っているあいつ。
なのに、あいつは自分がわからないという。
「時を失い、世に余されて、期する所なきものは愁へながら立ち止まり。滔々たる夢の流れ…… あなたは死に場所を探して、ここにいるの?」
声の主は銀糸の髪、碧き瞳の浮き世離れした姿。
腕には、あいつと同じ証があった。
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