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半泣き状態の由貴に竜は若干引きつつ、手元にあるものに視線を向けた。そこには厚さ2センチほどの数学プリントが置いてあった。
竜は、すでに席を外している由貴の前の席の椅子を引いて、腰掛けると、プリントを一枚手にとった。
「なんだこれ」
「見りゃわかんじゃん、すーがくのプリントですよ」
「なんでこんなもん持ってんだよ」
竜は怪訝な表情を浮かべながら、手に持ったプリントを見た後、視線を由貴へと向けた。由貴は椅子の背もたれに体を預けると、だらしなく足を伸ばして、溜め息をついた。
「数学の時間、毎回居眠りアーンド宿題忘れてたらさー、罰として明日までにやって来いって言われちったのさ」
「自業自得だな」
由貴の言葉に竜は呆れたような表情を見せると、手に持っていたプリントを元の場所に戻した。由貴は顔を上に向けると、情けない声を出す。
「こんな量ムリに決まってんのにさーわかってて出してんだよ、あの40代独身教師は」
「だろうな」
「そんでまたやってねえ俺を怒るつもりなんだって! ドエスか!」
「だったらブツブツ言ってねえで、やりゃいいだろ」
呆れたような声を出す竜に由貴は勢いよく身を乗り出して竜に詰め寄ると、必死な形相で訴えかけた。
「ムリムリムリ!! こんなん一人で出来るわけねえーし。家に持って帰ってもやらねえってわかりきってるし、ほら、ユーワク多いじゃん? 今、俺モモンハンにハマってんだって」
「知るかよ。だったら、学校でやって帰ればいいだろ」
わがままな由貴の言い分に竜は溜め息をつくと、放って帰ろうと椅子から腰を上げた。そのままその場を離れようとした竜のカッターシャツを由貴が、むんずと掴んだ。
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