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「まったまたー。ホントは知りたいく・せ・に!」
く・せ・に、と言うのに合わせて竜の頬を突いている人差し指を、ぷにぷにぷに、と動かす由貴。竜の周りの温度が下がっていっていることにはまだ気付いていなかった。
竜は鋭い視線を由貴に向けると、頬を突いている右手首を強い力で握り締めた。由貴の表情が一変して、強張る。
「……そんなに気になんなら、七不思議ってヤツの仲間にお前も入れてやろうか」
「それって遠まわしに殺すってことオオ!? って、マジでいてえから!! 痛い痛い痛い!!」
どす黒いオーラを放ちながら睨んでくる竜に由貴は大袈裟に痛みを訴えた。そのせい、というより元からではあるが、周りの視線が自分達に向けられていることに竜は気付くと、舌打ちをして手を離した。
「いってええ……血が止まるかと思った……」
竜ちんの暴れん坊、と由貴はささやかな反論をしながら、握られた右手首をさすった。竜はそんな由貴を一瞥すると、どうでも良さそうな表情を浮かべて、足を進める。
「もー、素直じゃねえなー。聞きたいなら聞きたいって言えばいいのにー」
「聞きたくねえっつってんだろ」
「なんでだようー! 七不思議とかちょうおもしれーじゃん!!」
「おもしろくねーよ」
全く七不思議に興味を持たない竜に由貴はつまらなそうな表情を浮かべた。非科学的なことは一切信じない。そんなものどうせくだらない作り話だ、と思っている竜が七不思議など信じているわけもなく、まして興味を持つはずもなかった。
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