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由貴は竜の無関心さに、ブツブツと文句を言った後、視線を前に向けて歩きながら、話を続けた。
「んだよー。話くらい聞いてくれてもいいじゃん! コニャニャケーションじゃん!」
「コミュニケーション、な」
「おっと、すまない。ニャンコ共和国に留学に行っていた頃のクセが出てしまったよ」
「黙れ」
ハハハ、と笑いながらおかしなことを言う由貴を竜は心底鬱陶しそうな表情で見た。由貴は、さっき痛い目に遭ったことをもうすでに忘れているのか、懲りずにふざけながら、イヒヒと笑った。
くだらない会話をしながら、正門を通り過ぎて、二人は帰路とは違う道を歩く。向かう先は、よく行くファミレス。昼食でもとるつもりなのであろう。
由貴は背中に無理やり背負った鞄を揺らしながら、視線を前に向けたまま、聞きたくないと言った竜に構うことなく話をした。
「素直に聞きたいデスって言えねえ竜ちゃんに特別に由貴ちゃんが話してあげますよ」
「……勝手にしろ」
反論するのも面倒になったのか、竜はうんざりとした表情で、そう言った。話すなら勝手に話せ。しつこい由貴を野放しにすることに決めたらしい。
由貴は、にんまりと笑うと口を開いた。
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