タイイクカン

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「今日の練習はここまで!!」  夕刻。体育館。オレンジ色の光が開きっぱなしのドアから差し込んでいる。  体育館には多くの生徒達がそれぞれのユニフォームを着て、疲れた表情で汗を拭いながら立っていた。一階にはバスケ部にバレー部、二階のやや狭いスペースには卓球部がいる。  男子バスケ部の部長らしき一番背の高い生徒の声に、他の部員達は練習を止めて挨拶をした。  他の部も同じく練習を終えるらしく、ざわざわと話し声が体育館に響き始めた。 「なあ、健太、帰りにモックでも寄ってかね?」 「ああ、いいよ」  体育館から部室へと向かうバスケ部の集団の中にいた健太は、隣を歩く友人である本田厚(ほんだあつし)の提案に笑って頷く。  体育館を出ると見えるグラウンドにはサッカー部や野球部の者達も練習を終えたのか、片付けを始めていた。それまで練習をしている生徒達を照りつけていた太陽は傾き、空は色を変えている。  健太は、ぼんやりとその様子を眺めながら部室へと足を進めた。  男子バスケ部の部室。壁沿いにロッカーが並び、中央にある机の上には飲みかけのジュースや食べかけのスナック菓子、漫画、雑誌が放置されていた。  数時間の練習に疲労の色を顔に浮かべている部員達は緩慢な動作で着替えを始めている。
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