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「あっつー、体育館とまではいかねえからせめて部室にくらいクーラーつけて欲しいよな」
「無理だろ、教室にもねえのに」
「あー、こういうときマジで私立がうらやましい」
部室内ではたわいもない会話がやり取りされ、すでに着替え終わった者は近くにあった椅子に腰掛け、スポーツ飲料で喉を潤していた。
健太は、やり取りされる会話に、まったくだと笑って頷きながらカッターシャツに腕を通した。すると、椅子に座っていた部員の一人であり、同じクラスの香川紀人が健太に声をかけた。
「なあ、健太」
「なんだよ?」
健太はカッターシャツを身につけると紀人の声に振り返って返事を返した。紀人は右手に持っていたペットボトルを机に置いて口を開く。
「今日、休み時間にお前、藤嶋に謝ってたじゃん。何やらかしたんだよ?」
「別に、何かしたってわけじゃねえよ」
紀人の言葉に健太は苦笑いを浮かべる。すると、周りで聞いていた者達も何の話だ?と興味を示し始めた。
「すげえ申し訳なさそーな顔してたじゃん」
「いや、あれは……あの話してただけだって」
「あの話?」
「ほら、七不思議の」
健太が、そう答えると紀人は「ああ……」と妙に納得したように頷いた。紀人も竜と同じクラスであり、それなりに事情は知っているのだろう。周りは、だから何の話だ?といったような表情をしていたが、詳しく説明することはなかった。
「しっかし、健太、よく藤嶋とまともに話せんなー。俺はなんか無理だわ。話しづれーし」
「そうか? 別に話してみると普通だぜ? そりゃ、たまにちょっとこえーけど」
紀人の言葉に健太は笑いながら返事をした。紀人は、普通じゃねえってとその言葉を否定し、周りにいた竜を知っている者達も紀人の言葉に首を縦に振った。
健太はその様子に苦笑いを浮かべながら、帰る支度を続けた。
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