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大きなスポーツバックを肩から下げた集団が正門へと向かって進んでいる。その周りには同じようなバックを下げた者やまだジャージ姿の者が歩いていた。
空は青と赤を混ぜた奇妙な色合いを見せている。
六つの影が並んで進む。しばらくすると、そのうちの一つがピタリと止まった。
「どうしたんだよ、健太」
立ち止まった影、健太に気付いた厚が足を止めて、振り返った。他の四人も同じように足を止める。健太は立ち止まって、慌てたようにバックの中を漁ると、顔を上げて口を開いた。
「やべ、タオル、体育館に忘れてきたかも」
「は? タオル? そんくらい気にすんなよ、明日の朝練の時に取ればいいんじゃね?」
早くモック行こうぜ、と言った厚に健太は、やや困った表情を浮かべる。確かに厚の言う通りではあるが、もし顧問や誰かに見つかったとき、これは誰のだとあちこちに回るのは避けたい。練習中の汗を吸ったタオルである。それだけは避けたい。健太の頭にはそういう考えが巡っていた。
「いや、すぐそこだし。取ってくるわ」
「早くしろよー」
「ああ、ごめんな」
健太が、そう言うと厚達五人はやれやれと呆れたような表情を浮かべた。健太が背中を向けて、体育館へ向かおうとしたとき、紀人が健太を呼び止めた。
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