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「ったく、アイツら人を馬鹿にしやがって」
からかわれたことに文句を言いながら、ずれたスポーツバックを肩に掛け直して、健太は体育館へと足を進めた。
辺りにはほとんど人の姿は無く、健太一人の影がゆっくりと体育館へと進んでいた。数十分前まで賑やかであったその場、静寂に包まれ、独特の雰囲気を醸し出していた。
健太は何となく辺りを見渡した後、後ろを振り返る。遠くに五人の姿が見え、いつのまにか噤んでいた口を開いて息を吐いた。
「紀人のヤツ……余計なこと言うなよな」
からかわれたことに対してムキになっていた健太ではあったが、最近、突如として現れた「七不思議の噂」に強がりながらも、見慣れた場所に対していくらばかりか気味の悪さを感じていた。
「七不思議なんて……しょーもねえヤツが考えたことなんだって」
朝に竜から言われたことを自分に言い聞かすように健太は声をもらすと、背筋を伸ばして、目的地である体育館へと急いだ。
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