イノコリ

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「んだよ」 「その言葉を待ってたワ」 「は?」  竜が振り返って由貴を見ると、由貴は竜に、にんまりと笑いかけた。由貴は竜のカッターシャツを掴んだまま話を続ける。 「学校でやったほーが効率がいいとボクも思うんだよね」 「…………」 「で、二人でやった方がもっと効率がいいと思うんだよね」 「…………」  由貴の話を竜は心底鬱陶しそうな表情を浮かべて聞いている。由貴は満面の笑みを浮かべると、最後の一言を口にした。 「ってことで、一緒に居残りしよ!」 「ぜってえ嫌」  竜は由貴の言葉に即座に拒否の姿勢を現して、掴んでいる手を乱暴に払うと、背中を向けて立ち去っていこうとした。由貴は慌てて立ち上がると、竜の腰にすがりついた。 「頼むよー!! 竜ちんが手伝ってくれたらすぐ終わるんだってー!! てか、一人で居残りはイヤ過ぎるー!!」 「自分の蒔いたタネだろ! 離せ!!」 「ヤダヤダー!! 残ってよー!! 昼飯奢るからさー!! 500円までなら奢るからさー!!」 「めんどくせーな!!」  ギャアギャアと騒ぎながら竜は由貴を、ズリズリと引きずったまま、教室内を進んでいく。由貴は、ガンガンと机にぶつかりつつもしぶとく竜に掴まっていた。  腰で履いていた竜のスラックスがずり落ちて、下着が見えそうになった瞬間、女子がキャアキャアと騒ぎ始めた。  竜はその状態に足を止めると、振り返って由貴の頭を思いっきり叩いた。 「いい加減にしろ!!」 「いってええ!! 竜こそいい加減に観念しろよ!!」
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