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「竜様、ご所望のカツサンドとお飲み物でゴザイマス」
「…………」
結局、由貴に根負けした竜が一緒に居残りをして、数学のプリントを手伝うことになり、由貴はその代償として学校近くにある生徒に大人気のパン屋からカツサンドを買ってくることになっていた。
二人以外いない二年A組の教室。由貴はビニール袋に入った竜様ご所望の品を竜様の前にお供えすると、自分の席に座って、自分用に買ったメロンパンとコーヒー牛乳を机の上に置いた。
プリントは残り厚さ1センチになっていたが、大半が竜のおかげである。竜は残りは自分でやれ、と由貴に命じると、自分は遅めの昼食にありついた。
「竜ちーん、数列ってどうやってとくの? つうか、シグマってなに?」
「教科書見ろ」
竜は由貴の前の席に座って、そっけなく返事をすると、一つ目のカツサンドを頬張った。
由貴は、見てもわかんねえんだって、と文句を言いながら右手にシャーペン、左手にメロンパンを持って数学のプリントに挑んでいた。プリントの上にボロボロとビスケット生地が落ちている。時刻は3時を回っていた。
由貴の、わかんねー!という叫びが教室内に響きながらも時間は刻一刻と過ぎていっていた。
カツサンドを完食し、すっかりやる気を無くした竜は机にもたれて惰眠を貪っていたが、パチリと瞼を上げて、体を起こすと、欠伸をしながら教室の時計を見上げた。
時刻は四時を少し過ぎたところであった。
時計から由貴へと視線を戻すと、由貴は未だに、ウンウンと頭を悩ませながら問題を解いていた。プリントは残り五枚といった所。
竜は流石に飽きてきたのか、椅子から立ち上がると机の上に置いていた鞄を探り始めた。
「竜? 何やってんの?」
由貴は竜の行動に気がつくと、視線を手元から竜に向けた。
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