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竜はもう一度溜め息をついて、襟足を撫でると、どうせ教室に戻っても退屈だと考え、図書委員が戻るまで図書室で待つことにした。
近くにあった新刊の中から興味が持てそうな本を一冊手に取ると、一番近くの席に腰をかけて、足を組み、本を読み始める。
少しだけ開いた窓から風が中に入り、竜の明るいブラウンの髪を揺らせた。
図書室内には風がカーテンを揺らす音、本のページを捲る音と時計の針が動く音が響いている。
竜から離れた位置に座っていた女子生徒は少しだけ顔を上げて、長めの前髪の隙間から片目で竜の姿を捕らえると、ニタリと唇を歪ませた。
しばらく、そうして時間を過ごしていると、それまで黙っていた女子生徒が突然、竜に話しかけてきた。
「あのう……」
「……なに」
竜はその声に視線を手元から女子生徒に向けて、返事をした。図書室内には竜とその女子生徒しかいないのだから、声をかけた相手は竜しかいない。
女子生徒は俯いたまま言葉を続けた。
「……ひとりですか」
「は?」
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