スガタヲカエタ

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 竜はその問いかけに眉を顰めた。ひとりですか。ひとりで学校に残っているのか、という問いだろうかと竜は解釈すると返事を返した。 「違うけど」 「……そうですか」  少しばかりか残念そうに呟いた女子生徒に竜は怪訝な表情を浮かべた。どうしてそんなことを聞くのか、と疑問に思いはしたが、聞くのも面倒だと視線を手元に戻した。  しかし、女子生徒の問いかけは終わらなかった。 「たいくつ、ですか」 「……別に」 「さみしく、ないですか」 「……別に」  そうして延々と続く問いかけに竜は段々と苛つき始め、ただ「別に」と答えていた。静かな教室に竜と女子生徒の声が響いている。  元々気の短い方である竜は、本を読むのを邪魔される上にわけのわからない問答の繰り返しに苛つき、視線を上げると女子生徒に文句を言おうとした。 「あのな、」 「竜ちーん!! 遅いじゃん!! 何やってんのー!!」  そのとき、竜の言葉を遮って開きっぱなしであったドアから由貴が顔を覗かせて、声を張り上げた。  竜は視線を女子生徒がいた位置から由貴へと向ける。  由貴は後ろ手で図書室のドアを閉めると竜の元へと近付いた。 「帰ってくんの遅せーから心配しちったよ」 「心配って、ガキかよ。つうか、お前、プリント終わったのかよ」 「終わってねえけどさ、丁度センセーが教室の前通ってー残ってここまで出来たんならまあいいっつって許してくれたのさ! ラッキー!」 「あっそ」  それやったのほとんど俺じゃねえか、と思いながら竜は呆れた表情で相槌を打った。そうしてると、由貴は、てかさーと話しかけてきた。 「竜、何ひとりで喋ってたの?」 「は?」 「いや、だから何独り言言ってたのって」 「独り言なんか言ってねえし、そこに座ってる…………」 「竜ちん?」  由貴の言葉に竜は呆れたような表情を浮かべつつ、女子生徒がいた場所を振り返ったが、言葉を途切り、固まった。由貴は竜の行動に首を傾げる。  竜が振り返った先に女子生徒の姿は無かった。
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