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ペタンペタン。
パタンパタン。
由貴と竜の二人分の足音が薄暗い廊下に響いている。窓はいつの間にか太陽が消え、闇に包まれ、ガラスを真っ黒に塗られているようであった。
延々と続く廊下を歩き、階段に差し掛かると下へ降りる。図書室から教室へ戻る道順を辿り、ひたすら歩き続けた。
最初はいつものふざけた会話をしていた由貴と竜であったが、次第に口を閉ざし始める。
静寂に包まれた廊下。いくら歩いても変わらない風景。明らかな異常事態にとうとう由貴が、声を荒げた。
「どうなってんだよ!! 気のせいじゃすまねえって!! ぜってえおかしい!! なんで教室に着かねえんだよ!!」
由貴が足を止めて、そう叫ぶと竜も同じように足を止めた。由貴の叫んだ声が廊下に響く。
由貴は困惑した表情を浮かべたまま、視線を竜へと向けた。竜もまた、あまりいつもと表情は変わらないが、どことなく表情が強張っていた。
「うるせえな。落ち着けよ」
「この状況で落ち着けるかよ!! なんだこれ、どうなってんだよ! 意味わかんねえ!」
さすがにこの状況で由貴もいつものようにヘラヘラと笑うことは出来ないのか、やや取り乱し、声を荒げた。竜はそんな由貴を見て、溜め息をつくと、黙れ馬鹿、と右手で軽く由貴の後頭部を叩いた。
由貴は叩かれた後頭部を右手で押さえると、眉を下げて竜を見た。竜は立ち止まって、右手を口元に当てると辺りを見渡した。
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